Category : Gamification / ゲームニクス

世界ゲーム革命 を読んだ

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本書は、「NHKスペシャル」の3つの番組を元に再構成されたものです。内容は、海外の開発シーンの紹介や、有名ゲームクリエイターの紹介、最近のホットなトピックといったもの。

基本的にゲーム業界の本です(さわり程度に Gamification も登場します)。 しかし、Gamification のゲーム業界のノウハウを応用するという観点においては、Webで参考にできる部分もあるように思えました。

テストプレイ

カナダはモントリオールにあるエンザイム社は、世界中のゲーム会社からテスティングが依頼されているといいます。 エンザイム社が競合他社と違うのは、単なるバグチェックに終わるわけではなく、そのゲームの良し悪しに関するアドバイスも請け負うという点です。 つまりQAもやるということです。
スタッフはアルバイトなどではなく正社員で、ゲーマーであるだけでなく、テスターとしての訓練を受けているそうです。

実際のテストプレイの様子も紹介されています。
マジックミラー付きの部屋で8人が同時にプレイを開始し、その様子は別室で監視されています。 特筆すべきは、テスターの顔をモニターしていて、表情やあくびなどから飽きていないかを見ていることでした。

このテストを依頼した制作会社は、制作費用の10%~20%をあてているそうで、その理由を次のように語っています。

「マーケティングにいくらお金をかけても、つまらないゲームは売れません。みんなが楽しめる完璧なゲームにしたいんです」

マーケティングよりも良い物を作ることにお金をかけた方が売れる、というのは、ソーシャルネットワークに密接なWebでは更に効果的な考え方に思えます(もちろん、良い物というだけでもダメですが)。

また、エンザイム社の社長 ヤン・シアー氏の言葉もWebに置き換えられそうです。

「運だけを頼りにゲームを作って、世界的に大成功するなどということは、極めて確率の低いことなのです」

普段、Webのサービスを作る時、「この機能をユーザーは喜んでくれるだろうか」と考えます。 その答えを出すために、サービスが目指しているものと照らし合わせたり仮想ユーザーを立てて検討しますが、結局は出してみるまでは分かりません。 ユーザーテストを実施することはありますが、制作費用の10%~20%も割くことは稀でしょう。

とは言え、ゲーム開発とWeb開発では、かかる期間や費用が違うという点は差っ引いて考える必要がありそうですが。

企画書~プロトタイプ

ドラクエ8 の開発などで知られる、株式会社レベルファイブの代表取締役社長の日野氏は、企画書を作った時点で2~3分のプロモーションビデオを作るそうです。この目的は二つあります。

  • ゲームのコンセプトが固まる
  • ユーザーからのフィードバックを早期に得られる

Webでも、企画書の時点でHTMLによるモックアップを作ることはありますが、公開前に情報を出すということはあまり無いように思えます。この手法はWebでも、プロモーションや開発の参考に使えるのではないかと思っています。

Gamification == ゲーム化 ではない

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Gamification (ゲーミフィケーション)は、その名前から誤解されやすいのですが、Web(など)をゲーム化することやゲーム要素を導入することのみを指すものではありません。

最初に結論

Gamification の目的は顧客ロイヤルティやエンゲージメント(ユーザーからの愛着心・ユーザーとの絆)の向上で、 そのための手段としてゲーム製作のノウハウを応用します。 ゲーム要素の導入は、手段の一つです。
このことは、Gamification についての情報を多く載せているサイト gamification.jp でも何度か取り上げられています。

楽しんでもらえるような要素を盛り込んで、それが顧客ロイヤリティの向上につながるようなことであればある意味何でもgamificationと言っていい。

gamificationを「ゲーム化」とは訳したくない。 | gamification.jp

gamificationという言葉自体についてはこちらの連中もかなりミスリーディングな言葉だと思っていることが強く印象に残った。繰り返されていたのだが、その本質は「ユーザロイヤリティ・エンゲージメントの向上」のためのものであるという点である。

gamification summit初日(1) | gamification.jp

Gamification の具体例

「顧客ロイヤルティ・エンゲージメントの向上(キリッ) 」とか言ってるだけだと胡散臭いので、具体例を考えてみます。

ゲーム会社のノウハウを参考にする

例えば、ゲームを作っている人たちは「ある機能を採用するかどうか」をどのような基準で判断しているのでしょうか。仕様検討時に行う効果の予測の判断基準というか。
ネットゲームの場合は(Webサイトでしばしば行われるように)リリース後に評判を見て調整することができますが、家庭用ゲームは基本的には売ったら修正できないので、検討を厳密に行う必要がありそうに思えます。

また、製作のフローも気になります。
Webでの一例として、

  1. 企画が立ち上がる
  2. 仕様洗い出し
  3. ワイヤーフレーム
  4. デザイン・システム開発
  5. テンプレートコーディング

というものがありますが、ゲーム会社ではどうなのかなとか。テストとか細かく挟んでたりするのでしょうか。

他にも、チュートリアルの手法や広告手法など参考にできる点がありそうです。

ゲーム要素の導入

ユーザの行動によってご褒美を出すなどのゲーム要素の導入も、もちろん Gamification です。
これはまた別の記事で掘り下げます。

シリアスゲームについて

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Gamification・ゲームニクスと、似ているようで違うのがシリアスゲームです。
前者の二つがゲームの手法を他分野に活かす系としたら、シリアスゲームはゲーム自体で問題を解決するものです。つまり、ゲームそのものです。

シリアスゲームとは、社会の諸問題の解決のために使われるゲームのことで、分かりやすいものに教育用途があります。DSで人気を博した脳トレ系とか典型です。
教育以外にも様々な用途に使えます。広告や社会的メッセージ・医療活動・各種訓練などなど。

広告的なゲームは、例えば「グランツーリスモは車のカタログとしても見られる」という評価を見たことがあります。社会的メッセージというのは、例えばFF7の魔晄炉は原発のオマージュという話がありますが、あれが近いように思います。医療活動では、例えば救急医療をゲーム中に解説・学習できるシーンがあると、いざという時に役に立つかもしれません。米軍では新兵勧誘目的や、そのものズバリ訓練目的のゲームも開発されています。

シリアスゲームは、 Gamification・ゲームニクスと比べると、Webに直接的に活かせるものではないかもしれません。しかし、「楽しみながら問題を解決する」という発想はWebにも応用できるものかもしれません。

参考図書
シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム
シリアスゲーム―教育・社会に役立つデジタルゲーム
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枯れた技術の水平思考とGamificationについて

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先日の記事、Gamification と ゲームニクス についてを読んだ方が、Twitter上で言及してくれているのに気づきました(ありがとうございます!)。

横井軍平が採用していた「枯れた技術の水平思考」とは逆の思考方法だなーっと思った。

Twitter / @maitokuwahara

とのことなのですが、「枯れた技術の水平思考」を知らなかったので調べてみました。まず見つけたのはWikiペディアです。

ここでいう「枯れた技術」とは、「すでに広く使用されてメリット・デメリットが明らかになっている技術」のことで、これを利用すると開発コストを低く抑えることができる。

横井軍平 - Wikipedia

横井軍平さんは少しだけ知ってました。ワンダースワンのグンペイは結構ハマったなあ。

Gamification的にもう少し飲み込みやすい説明が、はてなキーワードにありました(強調は引用者によるものです)。

「枯れた技術」とは「最先端のものでなく、散々使いこなれて、枯れてきた(安くなった)技術」 「水平思考」とは「まるっきり違う目的に使う-電卓をゲームに置き換えるような-こと」を言う。
任天堂の歴史
枯れた技術の水平思考とは - はてなキーワード

これらを読んで考えたのですが、既に蓄積されているゲーム業界のノウハウをWeb業界(など)に活かすGamificationは、「枯れた技術の水平思考」にあてはまると言えるのではないでしょうか。
ゲーム業界的にも、ノウハウを売ることで新たなビジネスチャンスが期待できたりとか。

また逆に考えても、ゲームクリエイターである横井軍平氏が言う「枯れた技術の水平思考」をWeb業界(など)に応用することは、Gamificationの範疇と言えるのではと。

Gamification と ゲームニクス について

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最近注目されている概念に、Gamification (ゲーミフィケーション)というものがあります。

Gamificationを一言で説明するのは難しいのですが、ゲームデザインのノウハウをゲーム以外のサービス・製品に活用すること と言えるでしょうか。

分かりやすく代表的な実装例に、ロケタッチfoursquareなどの位置情報サービスの シール/バッチ や リーダー/メイヤー が挙げられます。 古いものでは、夏休みのラジオ体操でもらえるスタンプも Gamification と言えるでしょう。

もう一方のゲームニクスというのは、立命館大学 映像学部教授 のサイトウアキヒロ氏が提唱しているもので、インターフェイスが中心に取り上げられています。
同氏のニンテンドーDSが売れる理由―ゲームニクスでインターフェースが変わるという本では、以下のように定義されています。

  • 誰でも、マニュアルを読まなくても使い方が分かる
  • 誰でも、いつのまにか機能を使い込めるようになる

これらを実現するためのUIに関する技術、といえるでしょうか。

ユーザーの心理面に注目する Gamification と、UIに注目するゲームニクス、とまとめられるかもしれません。
両者は共に、ゲームの良いところをゲーム以外で応用するという共通点があり、それはWebにも使えるものです。

今年のWeb業界は Gamification / ゲームニクス が盛り上がってくるかもしれません。