EPUB を手書きして KDP で写真集を出版した際のメモ

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Japanese nostalgic landscape

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Kindle ダイレクト・パブリッシング (KDP)で、写真集を出版しました。その際に分かった事をメモしておきます。写真集はわりとシンプルな内容で、凝ったことはまだ試してないです。

本記事の概要:EPUB → MOBI → KDP

作業の流れは次のようなものです。

  1. EPUB 形式のファイルを作成する
  2. それを MOBI 形式のファイルに変換する
  3. KDP で出版する

ポイントは、作成するのは EPUB だけど最終的に出版されるのは MOBI であるという事です。つまり、EPUB でできる事イコール MOBI でできること、ではありません。また、見た目の問題を解決するために、あえて EPUB の仕様違反が必要になる事もあります。
EPUB は MOBI を作成するためのベースである事を、あらかじめ認識しておくと良さそうです。

そのため、本記事のスタンスは、EPUB 自体の解説と言うより、EPUB を使って KDP から出版するための解説というものとなっています。

EPUB のサンプルファイルを入手する

EPUB をさわった事が無い場合は、まずはサンプルファイルを入手すると良いでしょう。横浜工文社さんの日本語Epubブックサンプルとか良いと思います。

僕はEPUB 3 スタンダード・デザインガイドという本を購入しました。EPUB3 を XHTML5 と CSS で手書きするという、マークアッパー的にキュンキュンくるコンセプトの本です。
内容は、EPUB3 の仕様に関するセクションと EPUB3 で使える CSS や HTML のリファレンスのセクションがあり、どちらもとても詳しく解説されています。フルカラーなのもあって読みやすく、お勧めの良書です。パブーで、かなり多くのページを試し読みできるので、とりあえず読んでみると良いです。

EPUB 3 スタンダード・デザインガイド

EPUB 3 スタンダード・デザインガイド

サンプルファイルを参考に EPUB のファイルを作成する

拡張子が .epub なファイルは、拡張子を .zip にする(ファイル名を変更をする)と、普通に展開できます。

サンプルファイルを元に、作業を進めていきます。EPUB は大きく分けて、メタデータのファイルとコンテンツのファイルに分けられます。メタデータ側の詳細な解説は、前述の横浜工文社さんのページや、電子書籍ファイルePubについて -ePubを自分で作成する- « lab.naoki.sato.nameを参照したり、または適宜ググったり本を読んだりしてください。

コンテンツファイルは、body 要素の中にコンテンツを記述していきます。今回は写真集ということで、画像一枚を一ページと想定しています。

MOBI も EPUB と同じくリフロー(※1)するフォーマットです。EPUB の場合はリーディングシステム(閲覧環境)によっては、画像の途中でリフローっぽい(普通のリフローとはちょっと違う気がする…)挙動をする(ページの途中で画像が途切れ、次のページで続きが表示される)ケースが見られましたが(Chrome の Readium で確認)、MOBI(KDP から出版されたもの)を iPhone で確認したところ、その問題は発生しませんでした。独自要素の <mbp:pagebreak /> を使用すると強制改頁が行えるので、念のため記述しておいても良さそうです。

EPUB のリーディングシステムによっては、画像の途中でリフローのような現象が見られた

Chrome の EPUB リーディングシステム、Readium のスクリーンショット。
上端に見えているのが前のページの画像。画像の途中でページが送られてしまっている。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<!DOCTYPE html>
<html xmlns="http://www.w3.org/1999/xhtml" xml:lang="ja" lang="ja" xmlns:epub="http://www.idpf.org/2007/ops">
  <head>
    <title>Japanese nostalgic landscape</title>
    <link rel="stylesheet" href="css/stylesheet.css" type="text/css" />
  </head>
  <body class="photo">
    <p><img src="images/01.jpg" alt="" /></p><mbp:pagebreak />
    <p><img src="images/02.jpg" alt="" /></p><mbp:pagebreak />
    <p><img src="images/03.jpg" alt="" /></p><mbp:pagebreak />
    <p><img src="images/04.jpg" alt="" /></p><mbp:pagebreak />
    <p><img src="images/05.jpg" alt="" /></p><mbp:pagebreak />
  </body>
</html>
EPUB のコンテンツファイルの簡単なサンプル。
p 要素一つが一ページを想定している。

ファイルを ZIP で格納する

メタデータファイルとコンテンツファイルが完成したら、ZIP ファイルを作成します。この時に注意点があり、横浜工文社さんのページEpubファイルの作成という節で解説されています。

ただ、ひとつやっかいな条件があります。 mimetypeがZIPファイルの最初のファイルで、しかも圧縮されてないことが条件です。

対応方法も同ページに書いてあるので、お好みの方法を使用します。
僕の環境は Windows なので、Windows内蔵ZIPツールで解説されている方法を使いました。

作成した EPUB ファイルを確認する

作成した ZIP ファイルの拡張子を .epub に変更したら、EPUB ファイルの完成です。EPUB Check でバリデーションしておきましょう。

EPUB Check はコマンドライン(黒い画面)で使うツールなので、若干の慣れが必要です。不慣れな場合は、ダウンロードページから DL したら、作成した EPUB ファイルと同じディレクトリに置いておくと良いでしょう。
また、実行には JAVA のランタイムが必要です。

EPUB Check の詳しい解説は、制作基本チュートリアルEPUB Check 整合性確認ツール - epubcafezip解凍したepubファイルの再パッケージング - The Door into Summerを参照してください。
あと、こんなのもありました(まだ試してないです)。epubcheckを起動させ、ログをテキストファイルに出力するbatファイル | IMAGEDRIVE

ブラウザにアドオンを入れて閲覧してみるのも良いでしょう。Firefox ではEPUBReader。Chrome ではReadium。Opera はeBook ReaderとかいうのがあったけどOpera Widgets の開発は現在行われておりません。とか書いてあるし、閲覧環境よく分かりません><

KDP に EPUB ファイルをアップロード

EPUB ファイルに問題がなければ、KDP にアップロードします。初回は KDP アカウントの登録が必要です。キンドる速報のはじめてのKindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)体験記という記事内の、KDPアカウントを登録する(約10分)という節でとても詳しく解説されています。

アカウントを登録したら、メニューの「本棚」から「新しいタイトルを追加」し、5. 本のアップロードから EPUB ファイルをアップロードします。
ファイルをアップロードすると、すぐにでも出版されてしまいそうで怖いですが、価格の設定などをしなければ、出版されることはありません。

本のコンテンツファイル というフォームがあるので、そこに作成した EPUB ファイルを指定すれば KDP にアップロードできる。

KDP の本棚ページのスクリーンショット。
ラジオボタンにチェックを入れないと、ファイルのアップロードができない。

アップロードが完了したら、プレビューツールとプレビューファイルをダウンロードして、レイアウトなどを確認します。
ここでの注意点は、プレビューツールはどうやら Kindle Paperwhite モード(モノクロ画面)でしか試せないようなのです。写真が全てモノクロになってしまいますが、実際のデータはもちろんカラーなので、そのまま進めてしまって大丈夫です。

「プレビューファイルをダウンロード」というリンクからプレビューファイルが、「プレビューツールのダウンロードWindows | Mac」というリンクからツールのダウンロードができる。

本棚ページのスクリーンショット。
「拡張プレビューツール」を使うと Kindle Fire などでもプレビューできるらしいが、それがどこにあるのか分からない><

出版手続きを完了する

プレビューが問題なかったら、価格設定などを行い、出版手続きを完了させます。米 Amazon による審査が行われるので、即時出版とはなりませんし、リジェクトされる場合もあります。
参考:Kindle ダイレクト・パブリシングをやってみて4回もリジェクトされた話 : アルカンタラの熱い夏
※上記記事の学んだことは必見です。

KDP で写真集を出版するにあたっての Tips

もっと色々溜まってきたら、別の記事でまとめるかもしれません。

  • 内容はアップデートできる
  • 縦向きデバイスで横向きの写真が一枚だけのページを見ると、余白が大きくなってしまう
  • 同様のケースでは、写真はページの上端に配置されてしまう(position や display: table-cell; や before: などによる中央配置は無視される)。ページ中央に配置する事もできるっぽいけど、今のところ方法が分からず
  • 同様のケースでは、横向きの写真を一ページに二枚配置すると丁度良い
  • 縦向きデバイスで縦向きの写真だと、一ページ一枚で丁度良い
  • 写真のサイズは、KDP が推奨する表紙のサイズが 2500px なので、それと揃えておくと安心っぽい
  • KDP が変換を受け付けるファイルサイズは最大 50MB なので、軽量化ツールなどでファイルサイズの調整が必要(写真集の場合は特に)
  • PDF で写真集を作ってからフリーの PDF → EPUB 変換ツールで変換したら、バリデーションでエラーが出まくり、KDP での変換時もエラーが出た(有料ソフトでは問題ないという話も)
  • 目次ファイルに ol 要素を使うと、Kindle だと list-type-style プロパティを指定してもリストマーカーが消えない。ol 要素ではなく p 要素を使うことで解決したけど、EPUB の仕様的には NG (KDP での変換に支障は無い)